消しゴムはんこは彫刻刀でも彫れる?彫刻刀の感覚を検証!

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こんにちわ!消しゴムはんこクリエーターのみむらともこです。

彫刻刀って聞くと何をイメージしますか?

私は小学生の時に図工の授業で思いっきり指切りました。今でも親指にしっかり刻まれてます。あの時痛いというよりはすごく冷静で「あ、いっぱい血が出てるわ」って感じだったのをすごくよく覚えています。

彫刻刀と言ったら木版画を学校の授業でやりましたよね。私、指切るぐらい危なっかしい手つきでしたが木版画の授業が結構好きでした。絵を描くのは大嫌いだったけれど、木を彫る作業だけは面白かったのを覚えています。もしやサディスト?!

彫っているときは色の反転がイメージできなくて、黒くしたいところと白くするところが逆になってしまったり、ネチャネチャしたインクをローラーでつけるのが面白かったり、なんて思ったことあったのでは?

そんな、学校では使う機会が少なかったかもしれませんが、思い出のある彫刻刀を消しゴムはんこで使ったらどうなのか?を見ていきます。

今回はぬっとしてみた人、ハーブと戯れつつ一緒に見ていきます。

それでは始めましょう!

1.彫刻刀で消しゴムはんこを彫る前に

木版だってやったことあるし、消しゴムだって彫刻刀で彫れるだろう、くらいな感覚で彫刻刀を買ってきました!

なつかしいわ、砥石がついてて、そうそう、彫刻刀って刃の形状の違う刀がいくつもありました。刀の名前何だっけ?それぞれどうやって使うんだっけ?買ってはみたものの、彫刻刀を使うのなんて20年以上ぶり。目の前にしてみると結構忘れてました。

では、彫刻刀と子供の頃に授業でやった木版画についておさらいしてみましょう!

1-1.彫刻刀の種類

今回手にした彫刻刀は4種類の刃が入っていました。それぞれの名前おぼえていますか?

本当に彫るのが好きだったのか怪しいほど私はすっかり忘れてました。

それぞれの刃の名前と特徴は、左側から

1.平刀・・・広くて平たい面を薄く彫るときに使います。確かに、カンナのように背景なんかを薄く平たく彫った記憶あります。

2.印刀、小刀、切り出し・・・デザインカッターと刃の形状が似ているので、切り込みを入れるのに使えます。

3.丸刀・・・刀がU字になっているので丸く彫れます。しゅるんしゅるんと削れて行く感じが面白くて小学生の時に彫刻刀の中でもよく使っていた気がします。

4.三角刀・・・刃がV字になっているので、細い線を彫れます。そういえば髪の毛のツヤを表すときにシュッシュッと三角刀で彫って、白髪みたいになった記憶あります!

なんとなく思い出してきました。ほかにも刃の種類はありますが、主に使う代表的な彫刻刀はこの4種類です。

1-2.そういえば木版っていつからあるんだろう

でも、木を彫るためにたくさんの種類の刀があり、いかに美しく木を彫ることを追求してきたんだなぁと思います。だってそうじゃなかったら消しゴムはんこのようにデザインカッターだけでも良かったんですもんね。

長い歴史の中で彫刻刀が編み出されてきたと思いますが、そういえば木版画っていつからあるんでしょうか?

木版画で代表的と言えば江戸時代の浮世絵。でもその頃には確立されているから始まりではなさそう。

日本ではいつから木版画の技術が使われているのか調べてみました。

参考文献:竹世堂(http://www.takezasa.co.jp/mokuhan/mokuhan02.html

日本の木版の歴史を紐解いていくと、なんと最古の木版画は飛鳥時代!

仏教の伝来とともに伝わってきました。はじめは1色刷りのシンプルな木版画。

出典:http://www.takezasa.co.jp/mokuhan/mokuhan02_1.html

そしてこれが今残っている世界最古の木版画っていうのだから、私たちって木の文化の国なんだなと改めて感じます。

海外での木版の始まりを見てみると、中国は日本よりも古く、中国から伝来してきたんだな、と感じます。

そしてヨーロッパではなんと14世紀末!歴史はとっても長くて建造物も多いけれど案外結構遅いんですね。そして、ヨーロッパは木版画は一時期の物で、あとは銅版画が主流になっていくようです。

最初に木版画が使われた目的は、経典を手書きよりも早く、いかに多くの人に簡単に広めるか、というところからきているのだとか。たくさんの徳を楽して積む、という横着から木版画が独自の進化を遂げていったそうです。

さらに平安時代、経典では足らず、仏を目の前に置いておきたい欲求から、仏の絵を版画にする、絵画としての木版画になっていきました。

鎌倉時代以降武士が活躍するようになってからは学問、読み物として木版画が使われて行きました。本の出版に木版って、彫る人が大変そう!でも、世界的に見てかなり高い技術があったのだとか。

戦国時代、ザビエルたちがやってきて海外からキリスト教が伝来されてきたころ、ヨーロッパで使われていた活版印刷の技術もやってきます。

活版印刷というのは一文字ずつのはんこを作っておいて、文章を作りたいときは文字のはんこを組み合わせていく、という印刷技術です。毎回文字を彫る手間とか失敗するリスクもなくて便利!ということで一大ブームがやってきます。

江戸時代になってだんだんと、本に文字だけじゃつまらないよねぇ、と挿絵を描いたりとか、ぎちぎちの文字だけだった本が自由に表現されていきます。

そうすると自由度が利く木版がやっぱり便利だわ、ってことになり、活版印刷に押されていた木版画が再び脚光を浴び始めました。

人気のあった活版ですが、実は日本を作ろうとすると、ひらがな、カタカナ、膨大な漢字、の一つ一つを作るのは手間だしコストがかかる、そして江戸時代になって鎖国により海外の文化が禁じられたこともあり、短いブームになりました。

確かに、アルファベットならまだしも、日本語の文字をストックして作っておくなんてかなり大変ですよね。

それから独自の文化を突き進むようになった江戸時代の日本は、多色刷りによる木版画を生みだします。浮世絵ですね!たくさんの技師が独自の技法を編み出して木版画大ブームが起こります!

江戸っ子に人気の浮世絵に限らず、京都でも、地方でも風刺や遊び絵などなど、それぞれの表現を使った木版画は大衆に広く浸透していきました。

横着から始まった木版画技術が、欲求を満たすために様々な工夫を繰り返していくことでいつの間にか高い技術を得ていたなんて、人の欲求ってすごいことですよね。それが私たちの祖先だなんて日本人ってすごい!

そしてこのことって木版に限らず、携帯電話でも同じことがいえる気がします。

私たちが使っていたガラケーってやつ。あれも日本が独自に進化していったものです。もともとは電話ができればいいだけのものだったのに、スマートフォンが出てくる前から日本人が使っていた携帯電話はスマートフォンさながらにメールもインターネットも携帯電話でできていたんです。

ガラパゴスなんて言っているけれど、私たち日本人の探求心っていつもただ機能を満たせばいいや、では終わらない人種だったんだなぁと改めて驚きです。

1-3.どうして学校で版画の授業があったんだろう

そうそう、図工、美術の授業には木版画の授業ってありましたよね。私たちは大人になってみても意外と彫刻刀の使い方を知っています。でも、ベトナムの人たちには木版画の授業がなかったとか。

初めてベトナムの人たちに消しゴムはんこを教えた時に版画をやったことがあるかを聞いたら「???」でした。確かにベトナムにいたときに本屋さん、文房具屋さんには彫刻刀は売っていなかった。だから、彫るっていう作業は生まれて初めてで興味津々。私たちにとってもなんてことのないことでも刃の使い方、向け方も全く分からなかったんです。

あまり考えず受けていた木版画の授業ですが、ベトナムの学校で習わない授業をなぜ日本では取り入れているのか?それは不思議ですよね。

版画教育の歴史を紐解いてみると、戦後から版画の教育から始まったようです。

子供たちが本の表紙や挿絵として生活の様子を版画にしていたことから、生活版画として授業に取り込まれて、それからずっと木と刀を使って自分の生活の様子を表現する、という授業が続いているのだそうです。木版画の授業にかける時間は短いけれど、日本に木版に長い長い歴史があるだけに浸透していったようですね。

ただ、私は木版画の体験はすごく得したと思うし、もっと長い時間をかけてほしいなぁと思うくらいです。うまいか下手かを評価するのは置いておいて、手を使って体験したことっていつまでもその感覚が残っていて、年月が経ってもその感覚はちょっとでよみがえってくるからです。

そして過去の体験は別のことでよみがえることもあります。そうすると世界がどんどん広がって行くと思うんです!

それに彫る、という作業は絵を描く作業と切り離されるので、絵を描くのと違って彫る作業はセンスとかうまい下手じゃなくって慣れなんだな、って感じられて美術に対して苦手意識がなくなる気がします。

何気なく受けていた彫刻刀を使った版画の授業って実は私たちに体験をさせてくれていたんですね!

2.実際に彫刻刀で消しゴムはんこを彫ってみる

大半の人が彫刻刀を使って木版画はやったことがあると思いますが、消しゴムを彫るのはどうでしょうか?

木と消しゴム、材質は違うけれど、まあそんなに変わらないんじゃない?となんとなくは想像できそうですが、実際やってみたらどうなのか試してみました。

いつもはデザインカッターを使って消しゴムはんこを彫っている私も実は彫刻刀を使って消しゴムはんこを作るのは初めて!!

こんな図案を用意して、4本の彫刻刀を使って彫ってみましたよ!

では実際にデザインカッターと彫刻刀でどんな違いがあるのかを見ていきましょう!

2-1.輪郭の線を残す

輪郭の線の縁には小刀(切り出し)を使いました。デザインカッターと形状が似ているから、線の縁をなぞる感じは同じかな、なんて思っていたらそうでもなかった。。。

デザインカッターに比べて刃が厚いので深くまで刃が入らず彫れない!!そして、抵抗が大きくて彫り進めるのに力がいるし、刃が大きくて小回りが利かない感じでした。

ただ、抵抗が大きい分勢い余ってうっかり彫ってしまったなんてことはなく、慎重に彫り進められるから安定して彫れる感じです。

さらに、刃が厚いっていうのは悪いことばかりではなく、刃が斜めに熱くなっているので、きれいに台形の形で彫れます!

さすがは考え抜かれた形状なのかな、と勝手に思ってしまいました。ただ、力の加減や扱い方は慣れていくとデザインカッターと同じように使えそうな感じでした!

2-2.広いところを彫る

内側の広いところ、輪郭の周り、耳、胴体、に分けてそれぞれの刀で彫ってみました。

2-2-1.平刀を使ってみる

輪郭の外側の余分なところは平刀を使って彫ってみました。デザインカッターだとギザギザと波型に彫り進めていましたが、平刀はギザギザがなくて平ら!しかもほぼ均等に平らになるから見た目がきれいです!

さすがは平刀!ただ、一度に深く彫ろうとすると途中で行き詰まって印影が汚くなってしまうので、カンナのように何度も何度も薄く彫っていかないといけないです。

ただ、印影の美しさには惚れこんでしまいます!!平刀はこれから私も使おうかな!と見直しました!

2-2-1.三角刀を使ってみる

本来三角刀って細い線を彫るのに効果があるのですが、ここはあえてデザインカッターで彫るときはギザギザと山形になるから、三角刀でも同じことができるのでは?と思って、耳の部分は三角刀を使ってみました。

デザインカッターだったらギザギザと往復で刃を2回入れていたところが、1回で往復できてしまう!これは楽です!

ただ、彫り残しが出てしまうので、何度も彫れていないところを彫る必要あります。こんな感じで彫り残しが出てしまいました。

それでも作業が半分近く軽減されるのは楽!そして、三角刀で彫った後の模様を見ていると、違うことに使えそうな、そんな気がします。。。ちょっと三角刀研究しようかな?って感じです。

2-2-3.丸刀を使ってみる

丸刀って木版画の授業の中でかなり使用頻度が高かった気がするなぁ、使いやすい、万能、という印象があったのですが消しゴムはんこの中ではどうでしょうか?

胴体の部分を丸刀を使って彫ってみました。

丸刀で彫ろうとしたら、刃の端が輪郭に当たって削れてしまった!!!

そう、丸刀が広がっていると他も一緒に彫る危険がありました。木版の時は万能な刃だと思っていたのに、それは木版の大きさが大きかっただけ?

だから端から端に彫ろうとするのは危険です。彫る方向としては中心から外側に彫っていきました。

丸刀は広いところを使うのは便利ですが、比較的狭いところ、線が近いところだったら切り出しや三角刀がよさそうです。

ただ、あまり力を入れなくてもスーッと彫れるので、楽に彫れる、って感じがします。そして、線をなぞるというよりは丸刀の彫った跡で模様が作れそうで今までにない消しゴムはんこが作れそうです!

2-3.細かい線を残す

顔の中の目や鼻、髭などのパーツはデザインカッターの要領で小刀(切り出し)を使っていきました。

デザインカッターに比べて小回りが利かないのではじめはちょっと大変かなぁという感じでしたが、慣れてくるとゆっくりと落ち着いて彫れていきました。

細かいパーツほど斜めに彫るのって大変なので、その点は小刀はきれいに斜めに彫れて安心して使えました!

こんな感じで消しゴムはんこが完成しました!

3.彫刻刀で消しゴムはんこを彫ってみた感覚の違い

いつもデザインカッターで彫っていると慣れない彫刻刀を使ったときに力加減や使用感に違和感がありますが、それも慣れなんだな、と思いました。

では、実際にデザインカッターとそれぞれの彫刻刀の刃にはどんな違いがあったのかをまとめてみました。

3-1.デザインカッターと彫刻刀との比較

全体的に考えると、デザインカッターですべてを彫り進めていたことを考えると彫刻刀って適材適所があって便利だな、という感じがしました。そして、うまく使い分けるとかなりきれいにできそう!というのもよくわかりました。さすが彫刻のための刃だけある、という感じです。

では、実際に彫ってみて感覚にどんな違いがあったのかを表にしてみました!

今回は消しゴムはんこで図案に沿って彫る、というのをやってみましたが、

彫刻刀を使ってみて思ったのは、彫刻刀って絵のとおりに忠実に彫る、というよりは彫った跡も模様として面白いことができそう!という可能性を感じました。

そして、今回使ったのは4種類だけですが、彫刻刀は刃の大きさや形状を考えるとたくさんの種類があるので可能性は広がりますね!

まとめ

今回は彫刻刀で消しゴムはんこを作ってみましたがいかがでしたでしょうか?

今回は彫刻刀からちょっと話がそれて木版画についても見てみましたが、日本の文化、そして思考や欲求から作り上げてきたものって本当はすごいものだったんだな、と日本の文化や日本人についてとても驚いたとともに、私たちって世界に誇れる技術を持つ人種なんだな、と改めて誇らしく感じました。

こんなことができるのはごく一部の優秀な人間というわけではなく、私たちが気付かずに日ごろから思っていることが、実は世界で見るととてもまれですごいことってまだまだたくさんあるような気がします。

私なんて不器用だし、なんて思っていても世界で見たら器用の部類に入っているかもしれないってことです!もっと自信を持ってくださいね!

そして、実際に消しゴムはんこを彫刻刀で彫ってみましたがいかがでしたか?

デザインカッターに比べると彫るための刀なのでとてもよく作られたものだな、という感じがしました。

子供の頃に使ったことのあるなじみのあるものなので、デザインカッターで彫ることに慣れていない人にとってはなじみやすいかもしれません。

ただ、私の場合は旅先で消しゴムはんこを作るのに荷物は最小限にとどめておきたい、と思ってしまうので持ち歩くことはしないと思います。

ただ、彫刻刀が悪いわけではなく、使い方によっては本当に面白いものなので、消しゴムで使ったときにどんな可能性があるのか研修していきたいと思っています!

ぜひ皆さんも久しぶりに彫刻刀で彫る感覚を挑戦してみてくださいね!

ありがとうございました!

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